おすすめの資格「防災士」――学びをわが家と地域の備えに生かす

地震、台風、大雨などの災害は、いつ、どこで起きるか分かりません。「自宅の備蓄はこれで十分だろうか」「避難を迷っている近所の人に、どう声をかければよいのか」と考えたことのある方も多いでしょう。そんな日常の疑問を、体系的な学びに変えられるのが「防災士」です。

防災士は、特定非営利活動法人・日本防災士機構が認証する民間資格です。国家資格ではなく、資格を持つことで特定の業務を独占できるものでもありません。しかし、災害から自分を守る「自助」、地域で助け合う「共助」、行政や企業などと力を合わせる「協働」の考え方を学び、平時から防災力を高める人材としての知識と技能を身につけたことを示せます。

アクティブシニアに向いている理由

防災士の活動は、重い物を運んだり、危険な現場に入ったりすることだけではありません。自宅の家具配置や備蓄を見直す、家族の連絡方法を決める、地域のハザードマップを確認する、防災訓練の案内役になるなど、体力や生活状況に応じた関わり方があります。

長く住んだ地域の地形や住民を知り、仕事や暮らしで培った調整力を持つシニアは、防災の場でも経験を生かせます。子ども世代や孫世代と避難場所を話し合うきっかけにもなり、退職後に地域との接点を持ちたい方にも選択肢の一つになるでしょう。日本防災士機構によると年齢の上限はなく、80歳以上で防災士になった例もあります。

地域のハザードマップを囲んで避難経路を話し合うシニア

取得までの3つの要件

一般的な取得方法では、次の3項目を満たしたうえで認証登録を申請します。

  1. 日本防災士機構が認証した研修機関の「防災士養成研修講座」を受講し、研修履修証明を取得する
  2. 防災士資格取得試験を受け、合格する
  3. 自治体、消防署、日本赤十字社などが行う、心肺蘇生法とAEDを含む所定の救急救命講習を修了する

試験を単独で申し込むのではなく、まず認証された研修講座を選ぶのが出発点です。試験の受験資格は、その講座の履修証明を得た人に限られます。消防・警察の現職者や退職者、消防団員などには別の特例制度がありますので、該当する方は公式サイトで確認してください。

救急救命講習の修了証は、認証登録申請時に「発行から5年以内」で、かつ発行者が定めた有効期限内である必要があります。以前受けた講習を使いたい場合は、講習名、内容、修了証の日付を申込先に確認しておくと安心です。

費用と受講時期は、申込先によって変わる

2026年6月時点で、日本防災士機構へ支払う基本費用は、防災士教本代4,000円、試験受験料3,000円、認証登録料5,000円の合計12,000円(税込)です。これとは別に養成研修の受講料が必要で、その金額は自治体、大学、民間の研修機関によって異なります。救急救命講習にも、主催者によって費用がかかる場合があります。

自治体の中には、住民を対象に教本代、受験料、登録料、研修費などの一部または全部を助成しているところがあります。民間講座をすぐ申し込む前に、「自治体名 防災士 養成講座」「自治体名 防災士 助成」と検索し、自治体の防災担当部署にも尋ねてみましょう。助成には居住地、地域活動への参加、人数枠などの条件が設けられることがあります。

全国共通の年1回の試験日がある資格ではありません。多くの場合、各研修機関が設定する集合研修の最終日に、同じ会場で試験が行われます。開催地と日程は日本防災士機構の研修日程一覧から探し、空席、申込締切、費用は実施機関のページで確かめます。

学習負担と試験内容

養成研修は、防災士教本21講目のうち最低12講目以上を集合形式で学ぶため、公式案内では最低2日間以上の日程になります。集合研修で扱わない講目については、研修機関が定めるレポートなどの提出が必要です。さらに教本の予習・復習、救急救命講習の受講、申請手続きの時間も見込んでおきましょう。

学ぶ内容は、地震・津波、風水害、土砂災害などが起きる仕組み、ハザードマップや警報の読み方、行政の災害対策、避難所運営、災害ボランティア、地区防災計画などです。自宅や地域に置き換えて考えると、知識が定着しやすくなります。

試験は3択式30問で、80%以上、つまり24問以上の正答が合格基準です。研修の最終日に受ける場合は、短期間に多くの範囲を学びます。視力や聴力、長時間の受講に不安がある方は、会場の設備、休憩、配慮の可否を申込前に研修機関へ相談してください。

AEDを使う救急救命講習に参加するシニア女性

取得後は「小さな一歩」から

資格取得が、そのまま就職や収入につながるとは限りません。防災士は名称独占・業務独占の国家資格ではなく、採用や報酬を保証するものではないからです。一方で、学んだ内容は暮らしの中で直ちに使えます。

まずは、家具の転倒防止、非常用持ち出し品、薬や眼鏡の予備、家族との連絡方法を点検してみましょう。次に、散歩を兼ねて避難所までの経路を歩き、段差、急坂、ブロック塀、夜間に暗い場所を確認します。地域では町内会・自治会や自主防災組織に声をかけ、防災訓練の受付、備蓄品の確認、参加者への説明など、無理なく続けられる役割を探せます。

ただし、防災士であっても災害時に自分の安全を犠牲にして活動することはできません。医療行為や救助活動を資格の範囲を超えて行わず、自治体、消防、警察などの指示に従うことが大切です。また、制度や地域の防災情報は変わります。資格に更新期限はありませんが、訓練や講習に参加し、知識と技能を更新していきましょう。

防災士の学びは、「何となく心配」を、具体的な備えと行動に変える道具です。まずは自宅のハザードマップを開き、近くで受けられる研修と自治体の助成制度を調べるところから始めてみませんか。

関連:地域とつながる活動については「ミドルシニア(50代、60代)が地域とつながりやすくなる仕掛けをつくりたい。」もご覧ください。

参考資料

情報確認日:2026年6月19日

  • 日本防災士機構「防災士になるには」
日本防災士機構|防災士資格の認定...
防災士になるには|日本防災士機構 防災士になるための手順や手続きについてご案内。防災士の認証と防災士制度の推進で地域社会の防災力向上に寄与します。
  • 日本防災士機構「防災士資格、資格取得について」
  • 日本防災士機構「研修日程一覧」
日本防災士機構|防災士資格の認定...
研修日程一覧|日本防災士機構 民間研修機関が実施する研修講座をご紹介。防災士の認証と防災士制度の推進で地域社会の防災力向上に寄与します。
よかったらシェアして下さい。
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事の編集・執筆