50代後半が近づくと、定年そのものよりも、その前後で暮らしがどう変わるのかが気になり始めます。仕事は続けるのか、夫婦の時間はどう変わるのか、親のことや住まいのことをいつ考え始めればよいのか。60歳は節目として語られがちですが、実際には50代のうちから少しずつ準備が始まるテーマなのかもしれません。
そんな時期に気になる一冊が、河野純子さんの『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』です。KADOKAWAの紹介では、65歳までをただの「待ち時間」にせず、「雇われる働き方」から「雇われない働き方」へ移る準備を始めようと呼びかけています。目標として挙げられているのは、好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、長く続けていくこと。そして、住まいや家族、人とのつながりを見直しながら幸福度を上げていくことです。
本記事は、出版社の公式紹介、出版記念トークセミナーで公開されている目次と著者プロフィール、ライフシフト・ジャパンの公式プロフィールをもとにした紹介です。私自身が通読したうえでの書評ではありません。書店や図書館で手に取る前に、「自分に関係がありそうな本か」を見極めるための案内としてお読みください。
目次
仕事だけでなく、暮らし全体を見直す本らしい
公開されている目次を見ると、本書は「定年後の再就職」だけを扱う本ではなさそうです。第一章では人生100年時代の時間感覚と、これからの働き方をどう捉えるかを扱い、第二章では著者自身の50代の揺れや試行錯誤が語られます。第三章は「小さな仕事」を長く続ける視点、第四章は健康、家族、住まい、人とのつながり、そして第五章では「ライフシフトの法則」が並びます。
この並びを見ると、読者に求められているのは、仕事だけの計画ではありません。60歳以降の生活は、働き方、家族との距離感、住まいの選び方、地域との関わり方が同時に動きやすい時期です。ひとつずつ別の問題として考えるのではなく、暮らし全体の設計図として捉え直す。その入口に置かれているのが、この本だと読み取れます。
50代で「ジタバタしてOK」と言ってくれる
特に印象的なのは、KADOKAWAの公開紹介にある「50代はジタバタしてOK!」という打ち出しです。50代になると、まだ働ける一方で、これまで通りではいられない感覚も出てきます。焦ってはいけないと思うほど、かえって落ち着かなくなることもあります。
本書の第二章には「52歳から始まった私の『第二の思春期』」「ジタバタした先に見えた景色」といった見出しが並んでいます。きれいに準備できる人だけのための本ではなく、迷いながら進む時期を前提にしていることがうかがえます。準備不足を責める本ではなく、揺れている今の時間も次のステップの一部だと捉え直す本として、50代の読者には入りやすそうです。

「小さな仕事」と「家の外のつながり」が鍵になりそう
第三章で目を引くのは、「小さな仕事」を長く続けるという考え方です。会社員としての肩書やフルタイムの働き方をそのまま延長するのではなく、自分で自分を雇う発想や、好きな分野を育てながら続ける形が想定されています。大きく稼ぐことよりも、無理なく、長く、役割を持ち続ける方向に軸足がありそうです。
第四章の目次では、健康、親、パートナー、住まい、人とのつながりが並びます。これは、特に50代女性にとって見過ごしにくい論点です。夫の定年が近づく、親の支援が増える、家の広さや場所が気になり始める、地域との接点が欲しくなる。こうしたテーマが一冊の中で横並びに置かれているなら、「仕事本」でもあり「暮らしの見直し本」でもあると言えそうです。
著者プロフィールによると、河野さんはリクルートや住友商事を経て独立し、ライフシフト・ジャパンに参加。60歳を機に、夫と愛犬とともに東京と三浦市で二拠点生活を始めたと紹介されています。仕事論だけでなく、暮らし方の実践が背景にあることも、この本の説得力につながっていそうです。
読む前に、先に考えておきたい三つのこと

この本を手に取る前に、次の三つを書き出しておくと、自分ごととして読みやすくなりそうです。
- 60歳までに減らしたい負担は何か
- 反対に、60歳以降も細く長く続けたい役割は何か
- 家族、住まい、人とのつながりのうち、先に整えたいのはどれか
答えは立派でなくて構いません。週5日働く形を変えたい、夫婦それぞれの時間を持ちたい、地域で顔見知りを増やしたい。その程度でも十分です。本書の目次は、そうした小さな本音を整理する手がかりになりそうです。
『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』は、60歳になってから読む本というより、50代のうちから「次の暮らし方」を考え始める人に向いた一冊に見えます。定年後の正解を教えてくれる本というより、仕事、家族、住まい、つながりをどう並べ替えるかを考えるための本。まだ先の話だと思っていたテーマが、少し現実味を帯びてきたときに、公開目次から気になる章を確かめてみてはいかがでしょうか。
書誌情報
- 書名:『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』
- 著者:河野純子
- 出版社:KADOKAWA
- 発売日:2024年12月24日
- 判型・ページ数:四六判・248ページ
- 定価:1,870円(税込)
- ISBN:978-4-04-115192-1
確認日・主な参考資料
情報確認日:2026年7月28日
